アラスジ・イン・ジパング

 時は戦国、群雄割拠の時代※1水城家※2はかつて長く天下を一つに治め、よき治世を布いていたのですが、下克上の風潮の中で謀略に掛けられ滅亡してしまいました。新幕府による激しい残党狩りの中、老臣瀬戸甫民(せと・すけたみ=甫民)に養育された当主水城竜樹(みずき・たつき=竜血樹)は逃亡の日々を続けていましたが、遂に追い詰められ、覚悟を決めることにしました。身重の愛妾※3紅姫(べにひめ=紅凰)を交易船で国外に逃した竜樹は、せめて敵兵に一矢報いんと密かに時期を窺っておりました。
 そんな折に彼は、知恵者と名高い寛美(ひろよし=寛美※4)とその妻お鈴(おすず=鈴華)と出会い、志を同じくする者として行動を共にすることになります。
 また、郎党どもの首領の上海※5大周(あまみ・ひろちか=周 大花)とその双子の弟小次郎(こじろう=小魚)とも戦火を交えた末に同盟を組むことにします。そして彼等は着々とその勢力を伸ばしていくことに成功します。
 ところが挙兵まで後一歩というところで、彼等は幕府の繰り出した琉球出身※6の将軍朴江葉(ぼく・こうよう=エバ)による火縄銃部隊の奇襲を受けます。何とか応戦し江葉を討ち取ったものの、味方の軍勢も戦渦の中でちりぢりとなり、お鈴は殺され竜樹も行方不明になります。辛うじて寛美と大周、小次郎は落ち延びることに成功しますが、彼等の被った痛手は大変なものでした。

 敗走した後、寛美達は中央から遠く離れた貿易港長崎※7でひっそりと暮らしていました。大周と小次郎が開いた酒屋はなかなか繁盛し、他国からの貿易商人達も出入りするようになります。また知恵者寛美は街頭で得意の弁舌を振るっていましたが、遊説の道中で出会った南蛮商人※8デイビットソン・A・ステュワート(=デイビー)に気に入られ、彼の頼みで商業の交渉活動なども行うようになっていました。
 そんなある日、双子は酒屋で不穏な噂を耳にします。何と、戦禍の中で命を落としたと思っていた竜樹が、幕府の将軍の大奥で囲われていると言うのです。噂の真偽を確める為、彼等は寛美と連れ立って江戸へと急ぎます。その一行の中には虚無僧※9に扮したデイビーの姿も。
 海賊紛いの狼藉を働いた末に江戸へと辿り付いた彼等は、腰元(笑)に扮して大奥へと忍び込みます。その最深部へと潜入した寛美は遂に、そこで小姓※10として使われていた憐れな竜樹を見付け出します。無論寛美は彼を連れ出そうとしますが、竜樹は気の触れた振りをして無下に寛美を追い払ってしまいます。自らの力不足を悔いつつ、必ず連れ戻しに来ると決意も新たに寛美は大奥から脱出します。

 実は戦場で敵兵に捕らえられた竜樹は、一度は切腹を試みたものの死に切れず、敵将の囲われ者にされるという屈辱を味わっていました。彼は復讐を心に誓い、唐渡りの御殿医※11劉飛竜(りゅう・ひりゅう=劉公主)と組んである試みを始めていたのでした。
 またその頃、交易船に乗せられていた紅姫は、船の難破により異国※12へと辿り付きます。そこがどこかわからないまま、言葉もろくに通じない場所で、彼女は竜樹の「迎えに来る」と言う言葉を信じ、彼の姿を捜し求めるのですが――。

注釈:
※ 1:既にこの時点で違ってるとか言わない。一番痛感してるのは紛れもなくこの私です(涙)。
※ 2:『劉』を訓読みすると「みずき」になります。本来の字義にはないようなのですが、それを更に音訳。
※ 3:何となく(爆)。元白拍子とかで身分が足りなかったってことにして下さい。ちなみに竜樹様に正室はいません。
※ 4:後に出て来る大花共々、男役です(・・・)。
※ 5:かーなーり苦しいのですが・・・双子の母がかつて上海にいたということで、地名を名字に冠したっつことで。
※ 6:雲南出身はかなり無理でした・・・エキゾチック系ということで笑って許して(涙)。
※ 7:いっそマカオ辺りまで行って欲しかったんですけども(笑)。
※ 8:一緒にこれを企画した友人曰「絶対ポルトガル人。スペイン系じゃない!」・・・ごもっとも。
※ 9:身長・金髪をばれないようにするには、他の方法が浮かびませんでした。何だか尺八ジャズを確立しそう(爆)。
※ 10:・・・正直言って、彼に限り現代版よりこっちの方がはまります。つかはまり過ぎ。前髪当然残す方向で。
※ 11:錬金術とかやれそうですよね・・・当時の中国人医師の化学技術は凄まじかったですし(主に金属工学)。
※ 12:ロニーは一体紅ちゃんをどこに送るつもりだったんだか。タイで山田長政に身柄預けるつもりだったとか(死)。



 とまぁ、第四夜まではこんなテイストのお話です。かなり根本的なところから違ってる気もするのですが(つか悪乗りなんですけど)、ざっとこんな筋のお話だったということで。もしも細かいところを確めたい方は、頑張って再読してやって下さい(最悪)。
・・・そして、実はこの後この「ここまでのお話」は第五夜から第七夜までの部分に続きます。未読の方はこのまま引き返して下さった方が賢明ですが、ネタばれOKの方はこの先にお進み下さいませ・・・。


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